スタートアップアイデアを思いつく方法

How to Get Startup Ideas : Want to start a startup?
November 2012

(原文:paulgraham.com)

このセクションの目次

  1. 問題
  2. 井戸
  3. 自分
  4. 気づき
  5. 学校
  6. 競争
  7. 注釈

スタートアップのアイデアを思いつくコツは、スタートアップのコツを思いつこうと頑張らないことです。自分の直面している問題を見つけることです。

良いスタートアップアイデアには、三つの共通点があります。まず、創業者自身があったら良いなと思うものであること。そして、実際に作ることのできること。最後に、他の人にはその価値がまだ見えていないことです。Microsoft、Apple、Yahoo、Google、Facebook 全てこのようにして始まりました。

問題

個人的に抱えている問題に関することでなければ理由は何でしょうか?まず、実際にその問題が存在するという確証があります。実際に存在する問題、というと当たり前のように聞こえるかもしれません。しかし、スタートアップの最も頻繁に犯す間違いは、まだ誰も抱えていないような問題を解決しようとすることです。

私もその間違いを犯したことがあります。1995年に、私は美術展をオンライン化させるための起業をしました。しかし、美術展の多くはオンラインになりたくなかったのです。美術におけるビジネスは、私の仮定していたものと違っていたのです。なのになぜ私はこのような馬鹿げたアイデアに6ヶ月も時間を費やしていたのでしょうか?それは、私がユーザーをよく見ていなかったためです。現実とは違う世界を仮説として立て、それに基づいて製品を開発していたのです。

ユーザーに私たちのつくったものを買ってもらうように説得を試みるまで、自分の仮説が間違っていたことに気づきませんでした。気づいたあとも、実際にそれを理解するのに時間をかけてしまいました。私は自分の仮説に夢中になったまま、ソフトウェア開発に時間をかけ続けてしまいました。

ユーザーの欲しがるものでなければ、意味がありません!

創業者の多くはなぜ、誰も欲しがらないようなものを作ってしまうのでしょうか?それは、スタートアップのアイデアを思いつこうとしてしまうからです。このような考え方は非常に危険です。良いアイデアが生まれにくいというだけでなく、実際にはよくなくても、良いものと信じ込み努力してしまうからです。

YCではこれらを「でっち上げ」や「漫才」スタートアップアイデアと呼んだりします。TVの登場人物がスタートアップを考えているとします。脚本家たちは彼らのためのスタートアップアイデアを思いつかなければなりません。しかし、実際に優れたスタートアップアイデアを思いつくのは難しいことです。なので普通は、ありえそうで、でも実際には悪いスタートアップのアイデアを思いつき、脚本に組み込みます。

例えば、ペットの飼い主のためのSNSなんかです。そこまで馬鹿げたことではないと思うでしょう。ペット飼い主なんて数百万人います。その多くは、ペットのことを愛し、多くの時間とお金を費やします。彼らはきっと他のペット飼い主と話のできる場所を求めていることでしょう。飼い主全員ではないかもしれませんが、総人口の2~3%であったとしても、多くのユーザーを得ることができます。広告を打ち出したり、有料のプレミアム機能を搭載させることができます。[1]

このようなアイデアにおける危険は、ペットを飼っている友達にテストしてもらっても、彼らは「絶対にこんなの使わない」と言わないことです。きっと「使わないことはないかも」と言ってくるでしょう。スタートアップが始動したあとも、多くの人は良さげなアイデアであると思うでしょう。自分では使いたいと思わなくても、他の人が使っていると聞いても驚かない、といった風に彼らは思うのです。しかし、皆がそのように思っているとしたら、結果的にユーザーの数は0人になってしまいます。[2]

井戸

スタートアップが始動するとき、少なくとも何人かの、本当にその製品を求めているユーザーが必要です。いつかは使うかもしれないユーザーではなくて、今すぐに使ってくれそうなユーザーが必要なのです。通常このようなユーザーの数は多くありません。それほど多くの人数が欲しているもので、スタートアップがすぐに解決できるようなものであれば、当然すでに存在している可能性が高いからです。つまり、一方で妥協が必要です。大人数の人がそこそこ欲しいものを作るか、少人数の人が強く欲しているものを作るかです。

そして、後者を選んでください。後者を選んだからといって無条件に良いスタートアップのアイデアになるというわけではありませんが、良いスタートアップのアイデアは基本的に全てこの部類に入ります。

X軸ではあなたの作っているものを欲している人の数を示し、Y軸ではどれほど強く欲しているかを示しているとしましょう。Y軸を反転させれば、企業がいくつかの穴のように見えるでしょう。Googleは巨大なクレーターです:数千万人もの人が使い、強く欲しているものです。始まったばかりのスタートアップにはそれほど大きな穴を掘ることはできません。

なので、どのような穴を掘るかには二つの選択肢があります。広くて浅い穴を掘るか、狭くて細い、井戸のような穴を掘るかです。

通常のスタートアップの創出アイデアは、前者のタイプです。たくさんの人がペット所有者のソーシャルネットワークに関心を持っています。

一方、良いスタートアップの創出アイディアは、第2のタイプです。ビル・ゲイツとポール・アレンがAltair Basicを作ったとき、マイクロソフトが創設されました。アルテアのオーナーは数千人しかいませんでしたが、このソフトウェアがなければ機械語でプログラミングし続けるところでした。 30年後、Facebookは同じ形をしていました。彼らの最初のサイトは、ハーバード大学の学生に限られていて、数千人しかユーザーがいませんでしたが、その数千人のユーザーは、Facebookのようなコミュニティを望んでいました。

でっちあげスタートアップのアイデアの多くは、広くて浅い穴です。多くの人が、ペット飼い主のためのSNSにそこそこの関心を持っています。

良いスタートアップのアイデアのほとんどは、深く狭いアイデアです。MicrosoftがAltair Basicを開発したときには井戸でした。数千人しかAltair所有者はいなかったのですが、強くこのソフトウェアを欲していました。30年後、Facebookも同じ形をしていました。最初のサイトは、数千人しかいないハーバード生だけのために作られたものでしたが、その数千人が強く欲していたものでした。

スタートアップのアイデアがあるとき、まず自分に聞いて見てください:今すぐにこれを欲しいと思うのは誰なのか。たとえ今まで聞いたことのないようなスタートアップからの不良品であっても使いたいと思うような人は一体誰なのか?それに答えることができないのであれば、そのアイデアがあまりよくないということです。[3]

井戸のような狭さが欲しい訳ではありません。井戸のような深さが必要なのです。狭さは、深さを得るために仕様を変えることによって必ず生まれる副産物です。実際、深さと狭さの結びつきはあまりにも密接なので、もしある特定のユーザーの欲しがるものであると分かれば、そのアイデアが良い可能性が高いということです。

井戸型であることは確かに良いスタートアップアイデアの必要条件ですが、十分条件ではありません。もしマーク・ザッカーバーグがハーバード生にのみ欲せられているものを作ったとしても、これほど成功しなかったでしょう。Facebookが良いアイデアであったのは、小さな市場で始まりつつ、大きな市場に繋がっていたからです。大学はどれも似たようなものなので、ハーバードで成功するものを作れば、どの大学でも成功します。そうして、多くの大学を瞬く間に獲得していったのです。十分な数の大学生を集めたら、あとは他の人も入れても良いことにするだけで、みな入ってきます。

自分

アイデアの将来性はどのようにしてわかるのか?大企業に成りうるものなのか、ただのニッチで終わるのか分かる方法はあるのか?多くの場合、わかりません。Airbnbの創業者たちは、自分たちの製品がどれほど大きな市場にまで挑戦できるか気づいていませんでした。最初は、もっと狭いアイデアだったのです。会議中に使わない場所を貸し出すことのできるようなサービスのつもりでした。このアイデアがどれほど大きくなるか予知していませんでした。次第に大きくなったのです。最初に知っていたのは、成功するだろうという感覚だけでした。そして、それはビル・ゲイツもマーク・ザッカーバーグも同じことです。

時々、最初のニッチからの将来性は目に見えていることもあります。そして稀に、当たり前ではないような将来性が見えることもあります:YCでの得意分野の一つです。しかし、どれほど見えているかというのは、経験がどれほどあっても、限界があるものです。将来性について最も重要なことは、最初のアイデアがどのようなものになるのかは、非常に見えにくいものであるということです。

もしそのアイデアの将来性が予測できないのであれば、どのようにアイデアを選べば良いのか? 少し馬鹿げているようで、また面白い答えがあります。あなたが正しい人で、正しい勘を持っているかどうかです。常に変化している世界を熟知していて、これはやる価値があると思ったのであれば、それはおそらく正解です。

禅とオートバイ修理技術という本の中で、ロバート・パーシグは「完璧な絵画の描き方?簡単さ。自分を完璧にして、自然に描けばいいのさ」と言いました・

このことについては高校で読んで以来、ずっと考えていました。絵画においてどれほど有益なアドバイスなのかはわかりませんが、ちょうどこの状況にも当てはまります。前例から見ても、良いスタートアップアイデアを作るには、それが作れるような人間になる必要があります。

ある業界を熟知しているというのは、その業界の先導者でなければならないというわけではありません。ユーザーであっても大丈夫です。マーク・ザッカーバーグがFacebookがいいアイデアだと思ったのは、彼がプログラマーだったからというよりも、パソコンを頻繁に使っていたからです。2004年の40歳たちに、自分たちの人生をネットで公開したいのかと尋ねれば、猛反対を受けることでしょう。しかし、マークはオンラインに住む人間であり、彼にとっては自然なことだったのです。

ポール・ブックハイトは、急速に変化しつつある世界を熟知している人間は、「未来に住んでいる」と言います。それとパーシグの言ったことを合わせればこうなります:
未来に住み、足りていないものを作る。
これは、最も成功したスタートアップのほとんどがそうでした。AppleもYahooもGoogleもFacebookも、最初は企業になろうとしていませんでした。創業者たちが、この世界に足りないなと思ったものから生まれたものだったのです。

成功した創業者のアイデアがどのようにして生まれてきたのかを追ってみると、その多くは準備された思考に何か刺激が起こったときです。ビル・ゲイツとポール・アレンはAltairのことについて「これのためにBasic 解釈プログラムが作れるかな」と想起しました。ドリュー・ヒューストンは、彼がUSBドライブを忘れたことに気づき、「私のデータをオンラインにできればな」と想起しました。多くの人が、Altairのことを知っていました。多くの人が、USBドライブを持ってくることを忘れていました。これらの刺激がこの創業者たちに創業させるきっかけとなったのは、彼らの経験が機会に気づくための準備になっていたからです。

なので、スタートアップアイデアに関して使いたい動詞は「思いつく」ではなく、「気がつく」なのかもしれません。YCでは、創業者の経験から自然に出たアイデアのことを「オーガニック」スタートアップアイデアと呼びます。最も成功しているスタートアップは全て、ここから始まりました。

聞きたかった答えではなかったかもしれません。スタートアップを思いつくためのヒントを求めてきたのに、重要なのは正しく準備された思考であると言っているのだから。しかし、残念に思われたとしても、これが真実です。そして、これも一種のヒントです。ただ、一週間ではどうこうできるものではなく、一年以上はかかってしまうわけですが。

もし、急速に変化しつつある業界に長けていないのであれば、身につければ大丈夫です。例えば、ある程度賢い人間ならば誰だって、一年以内にプログラミング(アプリをつくるなど)を熟知することができます。優秀なスタートアップをつくるには少なくとも人生の3~5年は費やさなければならないことを考えると、悪くない投資のはずです。特に、共同創業者を探しているのならばそうでしょう。[4]

急速に変化している世界を知るためにプログラミングを学ばなければならないというわけではありません。しかし、ハックすることを学ぶ必要はなくても、未来を見る力は必要です。マーク・アンドリーセンの言うように、ソフトウェアは世界を食べていて、このトレンドにはまだ数十年続きます。

ハックできるということは、アイデアがあるときに、実際につくることができるということです。必ずしも必要なことではありませんが(ジェフ・ベゾスもできないのだから)、優位になることです。大学のFacebookを作るなどといった時には大きな長所になります。ただ「面白い考えだ」と思うだけでなく、「面白い考えだ。今晩初期バージョンを作ってみよう」となります。

プログラマーであると同時にユーザーでもあればさらに良いことです。自分自身にユーザーテストを行なって改善されたバージョンを作ることができるのだから。

気づき

ある程度未来が見えてくれば、スタートアップアイデアの可能性に気がつくためには、逆算して今足りていないものを探すことができます。急速に変化し続けている業界に精通しているのであれば、今足りないものは何か気がつくことでしょう。しかし、それがスタートアップアイデアであるとは、すぐに気がつかないかもしれません。

なので、スタートアップアイデアを求めているのであれば、ただ「何が足りていないか」と意識するだけでは足りません。他のことは全て気にしないこと、特に「これは大企業になり得るアイデアか」などと考えないことが重要です。それを検証する時間はあとでいくらでもあります。しかし、もしそれを最初に考えてしまうと、良いアイデアを見捨ててしまう上、悪いアイデアに集中してしまうことになってしまいます。

欠けているものに気づくには時間がかかるでしょう。自分を騙すかのようにして周りにあるアイデアを発見しなければなりません。

しかし、何かしらのアイデアがあるということには気づいているはずです。アイデアがないということはありえないのです。今いる時代で全ての技術革新が止まるなど、不可能に近い話です。「Xがある前はどうしていたんだっけ?」と思わせるような製品は、数年でいくつも開発されるでしょう。

そして新しい製品によって問題が解決されると、まるで当たり前の解決策であったかのように感じるでしょう。あなたのしなければならないことは、その解決策を見えないようにしているフィルターを切ることです。例えば、現状の世界を当たり前であると思ってしまう、といったフィルターのことです。これは、視野の広い人ですら常には切っていません。いちいち疑問に感じていては、ベッドから玄関までの毎日の道のりすら非常に長くかかってしまいます。

しかし、スタートアップアイデアを求めているのであれば、現状を当たり前には感じず、疑問に思う必要があります。なんで受信箱がメールでいっぱいなのか。メールをたくさん受け取っているから?それとも、受信箱からメールを移動するのが大変だから?なんでそんな多くのメールがきているのか?あなたにメールを送ることで人々は何を解決しようとしているのか?

他により良い解決策はないのか?そしてなぜ受信箱からメールを移動するのが大変なのか?なぜ読んだ後もメールをそのまま放置しているのか?本当に受信箱が最適なツールなのか?

少しでも不自由に思ったことには注意を払ってください。現状を当たり前に感じることの利点は、より生活が効率的になるだけでなく、不自由を無視することでより快適に生活できることです。もし、50年後にあるもので今ないものを全て知っていたとすれば、きっと不自由で仕方がないでしょう。あなたが50年前に飛ばされても同じことでしょう。何か不自由に感じるのであれば、それはあなたに未来が見えているという証です。

対処したい問題を見つけたならば、それが「当然」問題であると説明できるようにならなければなりません。Viawebを始めたとき、オンラインストアは全て、それぞれのウェブデザイナーが一つ一つHTMLページを作っていました。しかし私たちプログラマーからすれば、それらのサイトがソフトウェアで生成されることが当然のことでした。[5]

つまり、スタートアップアイデアを思いつくとは、当たり前のことを見ようとすることなのです。おかしなプロセスに感じることでしょう:見ようとしていることは当たり前のことでありながら、まだ見たことのないものなのですから。

ここでしなければならないことは、視野を広げることなので、問題を解決しようとムキになってはいけません。座り込んでアイデアを考えるなどもってのほかです。最善の方法は、ただ何気なく今欠けているものについて考えることです。難しい問題について、好奇心から考えてみてください。そして、常にもう一人の自分で見えるものの違いや異常についてメモをとってください。[6]

時間にゆとりを持ってください。自分の頭を準備された頭に変える力はありますが、良いアイデアのタネとなる刺激に関してはどうしようもありません。もしビル・ゲイツとポール・アレンが一ヶ月でスタートアップアイデアをおもいつけと言われ、その一ヶ月がAltairの発表される前だったらどうしようもありません。おそらくよりつまらないアイデアで働いていたでしょう。ドリュー・ヒューストンはDropboxの前によりつまらない、SAT準備のスタートアップをしていました。しかし、Dropboxの方がアイデア自身も、自分の技術との相性も良いものでした。[7]

良いアイデアに気づくように自分を騙す方法の一つとしては、あったら良さそうなプロジェクトに関わることです。そうすれば、自然に足りていないものを作るようになるでしょう。すでに存在しているものを作ろうとしても、あまり意味がありません。

スタートアップアイデアを考えようとすると良くないアイデアに行き着いてしまうように、「おもちゃ」のようであると無視されがちな考えは良いアイデアに繋がることがあります。何かがおもちゃのようであれば、それはアイデアに必要なものは全て揃っているものの、重要性がないということです。かっこよくて、ユーザーに好まれようが、関係ないのです。

しかし、あなたに未来が見えていて、ユーザーの好むかっこいいものを作ることができれば、部外者の思う以上に大きな影響力を持ちます。マイクロコンピューターは、AppleやMicrosoftが開発し始めたときはおもちゃのようなものでした。その時代を思い出せるほど歳をとっているわけですが、自分のマイクロコンピューターを持つことは、「趣味」であると言われていました。

BackRubは、小さな科学プロジェクトのようなものでした。Facebookは学部生がお互いをストーカーするためのおもちゃでした。

YCでは、フォーラムで専門家がおもちゃであると無視しそうなアイデアを持ってくるスタートアップが大好きです。私たちにとってそれは、アイデアが良い証拠なのです。

もし、じっくりと周りを見たいのであれば(そうすべきです)、「未来を見て、足りないものを見つける」という考えを進化させることができます。未来を見て、面白そうなものを作る。

学校

大学生は「起業とは」について学ぶことよりも、こちらの方が良いと私はよく言います。「起業とは」、実際に経験して学ぶものです。大学で時間をかけるべきことは、未来のための準備です。大学は、そのための絶好の機会なのですから。

起業に関する簡単なことを学ぶことに時間をかけてしまい、スタートアップを始めるにあたって難しいことを解消できる機会を無駄に – オーガニック(自然に思いついた)アイデアを持てるような人間なる機会を失ってしまいます。特に、そんな授業は学校の性教育で学べることよりも学べることが少ないので、尚更です。

分野のぶつかりあいは、アイデアの生まれる源です。プログラミングについて詳しくて、新しいことについて学べば、ソフトウェアで解決することを見つけることができるでしょう。実際、1. その分野で生活している人間は、ソフトウェアに精通している人ほどソフトウェアで問題を解決することに慣れていないため。2. 無知の状態でその分野に入ってくるため、現状を当たり前のように受け入れないため、他の分野でこそ良い問題を見つけることができます。

なのでコンピューター科学を専攻していて、スタートアップを立ち上げたいのであれば、起業に関する授業ではなく、例えば遺伝子学について学ぶ方が良いでしょう。あるいは、バイオテックの企業で働くのも良いでしょう。コンピューター科学専攻の人は普通ハードウェアやソフトウェア企業でインターンします。しかし、スタートアップのアイデアが欲しいのであれば、関係のなさそうな分野でインターンするのも良いでしょう。[8]

あるいは、授業はそれ以上取らずに、実際作り始めてください。MicrosoftもFacebookも一月に始まったのは偶然ではありません。ハーバードではそれがReading Period(読書期間)という、期末勉強のために授業に出席しなくても良い期間だったからです。[9]

しかし、スタートアップになるようなものを作ろうとはしないでください。それには早すぎます。とりあえず作ることに専念してください。他の学生と一緒ならばなお良いでしょう。未来に準備する上で大学が良い環境であるのは、授業があるからだけではありません。

同じことをしようとしている他の人間に囲まれているのです。プロジェクトで一緒に働けば、オーガニックなアイデアに行き着くだけでなく、オーガニックな創業チームができるわけであり、それこそが最高のコンビネーションです。

研究には注意してください。学部生が友達全員の使うようなものを作れば、それはきっと良いスタートアップアイデアでしょう。しかし大学院では難しいでしょう。どういうわけでか、プロジェクトが研究のようになるほど、スタートアップにはなりにくいものになります。[10]

理由はおそらく、研究の対象となるアイデアはあまりに狭いため、研究として優秀さを重視し、ユーザーの問題を解決することを軽んじてしまいます。しかし、学生(や教授が)サイドプロジェクトとしてつくったものは、ユーザーの問題を解決させることに重視します。研究であることによる制限がないので、より効果的になるのかもしれません。

競争

良いアイデアというのは、当たり前のように感じるものなので、出遅れているのではないかと心配するかもしれません。しかしあまり気負わないでください。出遅れているのではないのかと心配することは、良いアイデアである証です。また、この疑問はウェブで10分ほど検索すれば解明することでしょう。

たとえ他の人が同じことに取り組んでいるとしても、遅すぎることはありません。スタートアップが競合につぶされることはほとんどありません。あまりに珍しいことなので、その可能性はないものと仮定して良いでしょう。なので、ユーザーを囲い込むような競合でもない限り、アイデアを捨てないでください。

もしそれでも疑問があれば、ユーザーに尋ねてみてください。遅すぎるかどうかは、あなたが作ろうとしていることを緊急に求めているユーザーがいるのかどうかによります。もし、他の競合にはないアイデアを持ち、それを求めているユーザーがいるのであれば、それは良い上陸拠点です。[11]

あとは、その上陸拠点が十分に大きいかどうかということです。そして、誰がいるかということです。もしその上陸拠点にいる人のしていることが、今後多くの人がしそうなことならば、それは今どれほど小さな数であったとしても十分に大きい可能性が高いでしょう。例えば、もし競合との違いが、最新の携帯でしか動かないものであるとしても、それはかなり大きな上陸拠点なのでしょう。

そして、競合を相手にしたときにすべきこと。経験の浅い創業者は、競合を過大評価しがちです。成功するかどうかは、競合以上に、自分が大きな影響を持っています。なので、競合がいても良いアイデアを持っている方が、競合のいない悪いアイデアよりも良いでしょう。

他のみんなの見落としていることに関する仮説がある限り、「混み合った市場」に入ることにあまり心配する必要はありません。それがあれば、とても良い出発点です。Googleも、そのようなアイデアでした。しかし、「とりあえず最高なXを作る!」などといった仮説では不十分です。競合の見落としているようなことを具体的に説明できなければなりません。

さらに良いのは、競合は勇気がないため逃げた考えであり、自分の計画は競合が最初の信念通りに動いていれば行なっていたことである、と話すことができることです。Googleもそうでした。彼らの前にあった検索エンジンは、本来の目標と違うことをしていたのです。より良い仕事をするほど、ユーザーの滞在時間は短いため、臆病になっていたのです。

混み合った市場というのは、需要があり、どの解決策も十分でないということなので、良いことです。大きく、なのに競合のいないような市場は現実的にありえません。なので、成功するスタートアップは、(Googleのように)競合のいる市場に入りながらもユーザーを全て勝ち取ることのできるような秘密兵器を持っているか、(Microsoftのように)今は小さく見えても大きくなる市場に参入するのです。

注釈

[1] このような悪いアイデアはWebの歴史からずっとありました。1990年代にも、XのためのSNSを作る、の代わりにXのためのポータルを作るであっただけで同じことが起こっていました。構造的には、「Xに興味のある人のための場所である」と書けば、人が集まってきてお金を得ることができます。このようなアイデアが創業者にとって魅力的なのは、統計上数百万人がXに興味を持っているからです。しかし彼らが忘れがちなのは、どんな人にも興味のあることは20以上あるものの、だからといって20以上ものコミュニティで毎日活躍する人は誰もいないということです。

[2] たまたま、ペット飼い主のためのSNSが悪いアイデアであると知っていたわけではありません。適当に生成されたDNAで、まともな生命体ができるわけないと知っているように、これが悪いアイデアであると知っているわけです。成功する可能性のあるスタートアップアイデアの数は、良いものの数より多く、良いものも、成功する可能性の低そうなものばかりです。なので、成功するかもしれないということしかそのスタートアップについて知らないのであれば、それはおそらくあまり良いアイデアではありません。

[3] 綿密には、ユーザーの欲求があなたの作ったものを使い始めるために十分な活性化エネルギーをうまなければならないということです。そして、それはものによって大きく異なります。例えば、既存の流通チャンネルでソフトウェアを売るのに必要な活性化エネルギーはとても高いので、ユーザーに使ってもらうには、かなり良いものでなければなりません。しかし、新しい検索エンジンを使うために必要な活性化エネルギーは小さいのです。なので、検索エンジンの方が、企業ソフトウェアよりも良いというわけです。

[4] 年を重ねるごとに難しくなります。アイデアには極大値はなくとも、キャリアにはあります。人生を歩む中で高い壁はいくつもあるものですが、年をとるごとに、壁は高くなってきます。

[5] ウェブが大きくなることは当然でした。1995年でそれに気がついた非プログラマーの数は少なかったものの、プログラマーがGUIがデスクトップに及ぼした影響をしっかり見ていたのです。

[6] この二人目の自分には、日記を書かせるの良いかもしれません。毎晩、その日に気づいた違いや異変について書くのです。スタートアップアイデアとしてではなく、純粋に違いや異変について書くのです。

[7] サム・アルトマンは、アイデアを考えるのに時間を多くとるのは、より良い戦略である上に、あまり多くの創業者が行なっていない、過小評価されたことであると言っています。

[7] サム・アルトマンは、アイデアを考えるのに時間を多くとるのは、より良い戦略である上に、あまり多くの創業者が行なっていない、過小評価されたことであると言っています。

最も良いアイデアは、創業者が時間をかけて気がつくため、比較的競争が少ないものです。しかし、平凡な考えは、皆似たような考えを持つため、大きな競争があります。

[8] コンピューターハードウェアやソフトウェア企業にとっては、インターンは最初の採用ステップです。しかし、実力があればこのステップは飛ばせます。優秀であれば、夏をどう過ごしていたとしても、卒業して雇われるでしょう。

[9] 経験則から、もし大学が学生に起業させたいのであれば、正しい方法で放置することが一番のようです。

[10] ITスタートアップについてです。ビオテックでは、また話が違います。

[11] これは、より一般的なルールの例です。競合ではなく、ユーザーに集中すること。競合に関する最も重要な情報は、ユーザーから得ることができます。

[12] 実際には、最も優秀なスタートアップには両方の性質があります。そして、市場と呼ぶものの域を対応させることで、戦略を説明することができます。しかし、この二つの考えを分けて考えると便利でしょう。

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