デザインスプリントとデザイン思考の比較

デザイン思考では実現できない新規事業開発の効果

デザインスプリントは、他のメソッドには実現できていない、新規事業開発において最も大事な点をおさえています。それは「顧客は、自分の課題が何か正確に認識していない」という視点に立ち、

  • 想定顧客の課題を定義し
  • 手早くサービスや商品のプロトタイプを作り
  • 最後にそのプロトタイプを想定顧客見せて
  • 反応を見ることで改善点を発見する

という一連の流れを高速に行い、繰り返すことで、サービスや商品の売れる確度を極限まで高めることができる点です。

当たり前のように思えるかもしれませんが、このシンプルなプロセスをブレなく進められるメソッドは、意外に少ないです。

例えばリーンスタートアップでは、収益性やチャネルなどの要素も考えなくてはならなかったり、ビジネスアイデアありきで顧客の課題という視点がなかったりするために、真の改善点を発見しにくいという致命的なデメリットがあります。

また、デザイン思考では、この4つのプロセスの前に「ユーザーを観察する」「ユーザーインタビューをする」というステップがあり、開発者側で課題を定義する前に顧客の意見を聞いてしまうので、何が正しくて、何が間違っているのか最初から判断に迷ってしまうという、やはり致命的なデメリットがあります。

新規事業開発において最も大事なことは、デザイン思考のように「ユーザーに聞く」ことではなく、リーンスタートアップのように「ビジネスアイデアありき」で考えることでもなく、

1まずは開発者の頭の中で想定顧客の課題を定義し
2.アイデアもそこそこに手早くサービスや商品のプロトタイプを作り
3.最後にそのプロトタイプを想定顧客見せて
4.反応を見ることで改善点を素早く発見する

ことです。いわゆる「ピボット」するポイントをいかに早く見つけて軌道修正するかが、成功の原則なのです。

以降、デザイン思考の問題点にフォーカスすることで、新規事業開発の成功法則について詳しく解説していきます。

デザインスプリントの問題点

デザインスプリントは、高速に多くのメソッド・プロセスを進めていくので、優れたファシリテーターと計算された優れたプロセスがなければ、途中で空中分解したり、時間が足りなくなって最後まで実行できずに終わります。

また「早期に想定顧客の反応を見ることで改善点を発見する」という新規事業開発の最も大事な目的が参加メンバー内で理解できていなければ、デザインスプリントを実行する意義が薄くなってしまうでしょう。

デザイン思考の問題点

一方、デザイン思考のプロセスで最も問題なのは、最初にフィールド調査を行うことです。これを実行すると一見、役に立つ情報が集まるように感じます。

しかし問題なのは、集まったコメントをどう識別するかの判断基準を決めずに集積してしまうことで、実際に多種多様なコメントが集まった際にどのコメントが有用でどのコメントが不要なのか判断がつかなくなることです。

結果、コメント内容を都合のよい解釈するすることでその場を丸く収めることとなり、本来見るべきポイントを見失った状態で次のステップに進むことになります。

当然ですが、見るべきポイントを見失ったピンボケ状態で進むので、終了後には、そのサービスや商品が売れる商品なのなかそうでないのかがよくわからない状態に陥ります。

この結果によって開発の先行きやプロジェクトの先行きが五里霧中になってしまった、という組織やプロジェクトを私は数多く見てきました。

新商品開発の本質を満たしていないデザイン思考

なぜデザイン思考が新規事業揮発に対して効果がないかということが少し分かっていただけたと思います。

分かりやすく言えば、デザイン思考は新規事業開発に最も大事な本質を満たしていないのです。

新規事業開発で最も大事なことは、「顧客は、自分の課題が何か正確に認識していない」ということです。

有名な話に、フォードの例があります。

およそ100年前、まだ自動車が普及していない頃、人々の長距離移動の方法はもっぱら馬車でした。

その時代に、人々に要望を聞いたら「もっと早く走る馬車が欲しい」と言ったそうです。

誰も「自動車が欲しい」とは言わなかったそうです。

あたり前ですよね。まだ自動車が普及していない時代ですから、誰も馬車より早く走り、しかも馬の世話もいらない自動車なんて、知らなかったのですから。

また、2017年にi Phoneが発表されるまでは、「電話と音楽プレーヤーとインターネットブラウザを1つにして、大きな画面で指でそうべてが操作できる端末が欲しい」とは思いつきませんでした。

このように、顧客に直接課題を聞いても、正確に答えられる人などいないのです。

しかし、デザイン思考では、まず最初のステップが「ユーザーを観察する」「ユーザーインタビューをする」で、まず最初に顧客に訪ねるアクションを重視します。

もしも、100年前にフォード社がデザイン思考を実行していたら永遠に自動車は普及しないし、もしも2017年以前にアップル社がデザイン思考を実行していたら、i Phoneは永遠に誕生しなかったと思いませんか?

これは1つの例ですが、デザイン思考には、このように新規事業開発で大事なことがおさえられていない(と言うより考え方が古い)ので、ワークショップという研修の場では盛り上がって一瞬使えそうに思えますが、いざ開発の現場になると役に立たないのです。

デザイン思考が良いというやっかいな錯覚

デザイン思考を実施したことのない組織、プロジェクトに属する人たちには、デザイン思考はきっと打ち出の小槌のようなものに映ることでしょう。きっとクリエイティブな思考ができるに違いないと期待をする方が多いように思います。
しかし、現実は違います。

デザイン思考は、米国のクリエイティブファームや大学がバックにあるので、さも効果があるように語られて、マーケティング的に成功しているので、日本で広まっていますが、実際の効果は、ほとんどありません。

私は10年以上さまざまな業種・業態の企業や組織の新規事業開発に携わらせていただいていますが「デザイン思考ですごい効果があった」という話を聞いたことがありません。

むしろ、「デザイン思考をやってみたが思ったほど効果がなかった」という方に多く会ってきました。

もちろん、これは偶然そうなのかもしれませんが、もし偶然ならば、デザイン思考によって成功したプロジェクトが多く知られていても良いと思います。

真の解釈は、今、この文章をお読みにあなたにはゆだねたいと思います。

執筆者

SPRINTマスター夏本 健司

SPRINTマスター

夏本 健司

スプリントジャパン株式会社 代表取締役。東京藝術大学美術学部卒業後、テレビ朝日グループ、電通グループを経て2002年に独立。

20年間UIデザイナー業務を行ったのち、2016年よりデザインスプリントのテストマーケティングとメソッドのローカライズ化を始める。

主な実績
1998年:保険業界の新規ビジネスにて5億円の出資を成功させる
2000年:建築業界の新規ビジネスにてゼロから月商4000万円の事業へ
2002年:金融業界の新規ビジネスにて会員数を2万人から20万人へ成長させる
2004年:教育事業の立ち上げにて52のカリキュラム構築を担当
2005年:健康分野の新規ビジネスにて3ヶ月で損益分岐を達成
2016年:デザインスプリントをサービス化を開始

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